名曲聴いて、何になる?

クラシックの名曲って、何の役に立つんだ?

初デート (2)

初デート (2)


「ドーブツでしょ、あのひと?」
「いや、ドーブツって……」
「告げ口なんかしないから、あんたも正直に
言えば?」
「ボクは片桐社長を動物だなんて、思ったこ
とはないです」

「敬語止めて。気持ち悪い。あ、テーゾーさ
んがドーブツだとすると、テーゾーさんのペ
ットのあんたは、ドーブツのペットってこと
になるね。ゴリラが可愛がってるネコみたい
なもん、ってこと?」

丘一郎は、とりあえず目をつぶった。
(こっちも自分の言いたいことだけ言うよう
にしないと!)
と思って。
(それに、ゴリラって猫を飼うんか?)

「とにかくテーゾー叔父さんが、あんたを都
合のいいペットとしてとっ捕まえたんだって、
あたしは思ってる」
「おかしいでしょ、そんなの」
「なんで?」

「展開が早すぎる!」
「展開? 展開って、なによ」
(いやいや、こんな話、するつもりなかった
のに……)

「もしもですよ……いや、もしもだよ。もし
片桐社長がただのお偉いさんの気まぐれとい
うか我が儘な思いつきで、たまたまボクを採
用したんなら、そこからこんな無茶苦茶な展
開は出てこない……出てこないんじゃないか
と思う」

亜弥は
(へえ)
という顔でしばらく黙った。丘一郎は深呼吸
……というほどではないが、ちょっと息を整
えてまた話し出した。

採用試験の、あの最終面接の場所に、いきな
り片桐社長が飛び込んできてからのこと。一
連の
(信じられないような出来事の流れ)
について。

ピアノ・バー「アンダンテ」で、社長がピア
ノ・トリオという言葉を聞いてピアノ三台の
演奏かと思ったという話で、亜弥は吹き出し
た。

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